PRISME / ANNBJORG LIEN
 Kari Rueslattenのアルバムに参加していたノルウェーの女性フィドラーの今年リリースのソロ・アルバム。全部インスト。ちなみに彼女は過去にもソロを出しているみたいです。
 アイリッシュではないフィドルはおそらく初めて聴いたと思います。ゆっくりした曲を聴いても違いはわからないのですが、躍動感ある1曲目の"Villvinter"などを聴くと、アイリッシュとのメロディの違いがわかったような気になれます。それに、なんとなくKariのアルバムと共通した部分なども感じ取れたりします。おそらくはヒーリング・ミュージックらしくない、元気ある曲が私は好きです。"Apribarnet"しかり"Valhalling"しかり。パーカーションの音が、フィドルを始め他の楽器の音色にマッチしていると思います。
 私はきっと純粋なメタラーではないので、新鮮味もあって(やっぱりアイリッシュ・トラッドとは違う)、なかなか愛聴していたりします。ジャケットとの爽やかなブルーの色合いもいいです。でも美人フィドラーなのに、お顔がジャケットでしか拝見できないのは大いに不満です(笑)。 (純生)


CLOSE TO THE FLOOR / ASHLEY MACISAAC
 '92年にリリースされた1st。Ashleyはわずか17歳です。最初っからキルトをはいたオルタナティヴ・パンク・フィドラーだったわけではなくて、ジャケット写真の彼は実に素直でまじめそう。シンプルなアコギやピアノをバックに、ごく普通のトラッドを演奏しています。だから、特に個性的でもなくて、素晴らしく面白くもないわけ。んーでもAshleyの奏法のようなフィドルは他のケルトでは聴いたことはないので、私にとっては奏法自体が個性です。ライヴでもちょこっとピアノをひいていたが、ピアノだけの曲もやっている。ステップ・ダンスの音が入っている曲もある。
 CDでの1曲は4,5曲からのダンス・チューンで構成されていて、当然ではあるけど、曲名はそれぞれに付いている。ご丁寧にもダンスの種類も書いてあって、Jig, Reel, Air, Marchの他に、知らなかったけどStrathspeyというのもある。Jigが何拍子に対して、これは何拍子…とか説明しなくちゃいけないのだろうけど、未だにJigとReelの区別が付かない音痴なので、あまり聴き馴染みのない感じで、楽しく陽気に踊れそうだ!とだけ言っておこう。
 ずっと探していたのですけど、来日公演の会場でやっと買えました。2ndは品切れで、テープではあったけど断念。2ndも同じ様なサウンドらしい。はじけた3rdが日本デビュー盤になります。 (純生)


MOONSHILD / CELTUS
 '97年10月にダブリン市内で手に入れたもの。MAMA‘S BOYSはいったいどこへ消えてしまったんだろう…と思っていたが、自らちゃんと探し出してきました! 彼らの弟、Tommyが亡くなったことでとうとう男性デュオと言う形になってしまいましたが、その名はCELTUS。これを見つけだしてきたのはアイルランドでの収穫である。…といっても、友人に教わったんですけどね。その当時シングルとしてリリースされた曲のビデオ(TV番組でのライブ)も見せてもらいました。いかにもアイリッシュのサウンドで、ティン・ホイッスルなんかも吹いている。もともと彼らのルーツだしね。サウンドの方は…MAMA'S BOYSのときのロック調は消え失せ、さりとてU2やアイリッシュ・トラッドとも違う、独特の世界。でも結構ポップにまとまってたりします。各曲のイントロが特にアイルランドを彷彿とさせます。何度も聴くうちに私はだんだんハマってしまいました。そういえば、アイルランドではこのアルバム、その後フィル・ライノット賞??かなんかを受賞していたような気がする。やっぱりアイリッシュだなぁ。(Lica Mercury)


LIVE AT IN THE NATIONAL CONCERT HALL / DONAL LUNNY
 現代のアイルランド音楽界において最重要とされる音楽家/プロデューサー/ブズーキ奏者のDonal Lunnyの唯一のソロ名義のアルバム。'87年にバンドを率いてのライヴを収録したもの。曲によりリードをとる楽器がいて、フィドルやイーリアン・パイプやフルートであったり。でも、リズム・セクションと共に、びしっとサウンドを引き締めているのがDonalの弦楽器であるブズーキの音なのです。伝統的なダンス・チューンを、複雑なリズム展開にアレンジしており、スピード感もあり、ロック・スピリットの溢れたサウンドになっている。どれも同じのはずのケルトが、この人の手にかかると個性が浮き出てきます。全曲インスト。たった6曲なのが、ちと物足りなく残念。今年の夏の来日公演でも聴けた曲も入ってます。  (純生)


THE BOOK OF SECRETS / LOREENA McKENNITT
 カナダ出身のケルトな女性Vo兼ハープ奏者の'97年リリースの7thアルバム(クリスマス・ミニ・アルバムを含めて)。前作から待たせてくれたわりには、残念ながら『MASK AND MIRROR』ほど気に入ってはいない。曲の出来もあるがハープ以外の楽器の派手な起用がないのも一因かも。って、昔のアルバムに比べたらハープの比重は減っていて、他の楽器が活躍してはいるけど。ただし女性Voとしての彼女の魅力は揺らがない。そもそも私は、アイリッシュ・ミュージックをまじめに聴く前にLoreenaの声を聴いてしまったが為に、なかなか本土の女性Voに魅惑されないという病気でした。ジャケットの中のLoreenaは、ため息が出るほど美しい! 動いている姿もまた見たい。そうそう、ナンシーさん、地主さんからの情報ですがこのアルバムからの"The Mummer's Dance"がアメリカのシングル・チャートの20位ぐらいまで上がったそうだ。こんな安らかで優雅なLoreenaの楽曲がね〜と驚いてしまう。アメ公にも、こんな楽曲を受けいれる感情が残っていたとはねと見直す。ビデオ・クリップすらあるそうだ。日本盤は豪華ブックレットに、本人の曲解説付きで、厚い目のケースに収納されている。日本の担当者は本気だ。お願いだから、約束通り単独来日公演させてよ!  (純生)


SUAS E! / MARY JANE LAMOND
 '97年リリースの2nd。バックの演奏にドラムやエレクトリック・ギターなど1stにはなかった楽器がもってこられていて、モダン化した音作りになっている。フィドルやバグパイプといったケルトな楽器もありだけど。装飾されたこのアルバムを聴くと、1stはシンプル過ぎてちょっと物足りなくなるかも。ゲール語で歌っていること、彼女の歌唱の良さに変わりはない。1st路線のアカペラで彼女の静かな足の音だけの曲もある。年期の入ってそうなお婆さんに歌わせて、彼女はバックVoを担当する曲や、見事なステップ・ダンスの音が入ってくる曲など、バラエティにも富んでいる。ライヴで彼女が歌っていた曲は、このアルバムからの選曲がほとんどだったように思う。ライヴで感動しなかったのがウソのように、アルバム聴いていると心地よいのですけど。前作同様にAshleyも参加しています。 (純生)


THE SNAKE / SHANE MACGOWAN AND THE POPES
 元POGUESのVo、Shane MacGowanのバンドの'94年リリースのアルバム。やっていることはPOGUESと変わりなく、パンクとアイリッシュ・トラッドの融合…融合なんて言葉を使っちゃうと実験的な音楽に思われちゃうか。アイリッシュ・トラッドを荒っぽくして、Shaneがダミ声で吠えて、ロック色を強めた感じ。だからメタル側の私にとっては、凄く親しみやすいアイリッシュ・トラッドになるわけです。気分が楽しくなっちゃうようなメロディが満載です。彼のアルバムもPOGUESのアルバムも、大当たりはなくてもハズレはなさそう。さて"Victoria"という曲にギターとして参加しているのがBrian Robertsonです。彼の楽曲にしてはギターのフーチュア度が多く、ソロも弾きまくっていいます。ちなみにBrianがプロデュースしたShaneのシングルなんかもリリースされているそうな。 (純生)


ROOM TO ROAM / THE WATERBOYS
 アイルランド出身のロック・バンドWATERBOYSはデビュー当時は普通のロック・バンドだったらしい。そういえば大貫憲章が押していたので、オシャレなニュー・ロマンティックなニュー・ウェイヴ・バンド(それらしい単語を並べただけ@)だったのかも。ところが後期になると2枚だけアイリッシュ・トラッドに近付いたアルバムを残しているとか。その1枚が'90年リリースの本アルバムで、あの蛇腹美少女Sharon Shannonが唯一メンバーとして参加しているアルバムです。ああ確かにおっさんに囲まれて、笑顔全開(しわしわ全開?)のSharonちゃんが裏ジャケに写ってます。イントロ的な1曲目から続く"Song From The End Of The World"のところどころで飛び出してくるアコーディオンの音色が非常によろしい! おまけにソロもアコーディオンです。これが、このアルバムのベスト・プレイです。元気があってよろしい! トラッド・バンドの中で弾きまくるのもいいけど、こうやって歌入りのロック・バンドの中でのアコーディオンもまた新鮮でよしです。ま、その後もところどころでアコーディオンが活躍しています。アルバム・トータルは45分ほどなのに、全17曲とこてこてなのですけど。なお、WATERBOYSは既に解散していて、昨年にはVo氏がソロで来日公演を行っている。トラッド周辺の人が騒がなかったのを見ると、もうトラッド寄りではなかったのかな?  (純生)