SULT〜SPIRIT OF THE MUSIC / V.A.

 ゲール語専門のTV局の中のDonal Lunnyがプロデュースをする音楽番組のCD編集盤。音楽番組は様々なゲスト・ミュージシャンを呼んで、Donalのバンドと公開ライヴを行うというものらしい。Donalはプロデュース及びバックに徹しているようで、ゲストの個性が色濃く出ているようだ。ふわふわとした感じのCLANNADのMaire BrennanのVoは、柔らかく優しく静かな曲なので、浮いちゃいそう。来日公演にもDonalバンドとして来日もしているフィドラーのNollaig Caseyのスピード感溢れる曲はとてもいい。リズムに合わせて腰振りながら演奏している彼女の姿が艶めかしくもあり、かっこよくもありで忘れられないって、おばさんだけどね。一方の笑いじわのある純生公認美少女Sharon Shannonは彼女らしい陽気な曲。大御所Van Morrisonも参加している。参加ミュージシャンも多いし、様々なタイプの曲が17曲もあるし、これ1枚聴いただけで、アイリッシュ・ミュージックがわかったつもりになれるかも。入門盤としては最適。やたらリリースされているケルトのコンピよりも、楽曲の質は確実にいいです。(純生)

TONIGHT'S THE NIGHT LIVE / STEELEYE SPAN
 '91年リリースのライヴ。エレクトリック・トラッドであるSTEELEYEは初期3枚以外はゴミということらしいが、ライヴは近年のもいいと薦められていたので買ってみた。Maddy Priorの力強い歌声が映えて陽気でいて、オーディエンスも一緒になって歌えてしまうような曲が複数あるのがいい。それらのどの曲も私は気に入った。"Tonight's The Night", "Padstow", "All Around My Hat"は名曲ですね。全部がいい曲ではないけど、確かにライヴは凄い!というのがわかった気がします。ライヴでもコーラスはきれいです。(純生)


TIME / STEELEYE SPAN
 '96年リリースの最新作かな。念のため、ゴミも確認してみることにする(笑)。1曲目の"The Prickly Bush"はライヴで聴けた名曲に似た綺麗なコーラスで始まる曲。名曲の予感もするが、いまいちかったるくて煮え切らない; 男性Voがメインで歌っているのがいけません。Maddy Priorに歌わせてしまえば良かったのになあ。2曲目"The Old Maid In The Garrett"って、名曲じゃないですか? 勇ましく力強いMaddyの歌声、そして太鼓のリズム。長い長いフィドルのソロもかっこいい。しかししかし、3曲目行以降はダメです。爽やかだし、ケルト入っていないし、どう聴いても普通の曲過ぎます; 1,2曲目とのギャップが激しすぎます。(純生)


READY FOR THE STORM / DEANTA
 北アイルランド出身の若手トラッド・バンドの2nd。彼らを知ったのはGREEN LINNETレーベル20周年の2枚組サンプラーに入っていた、このアルバム収録曲"Culloden's Harvest"を聴いて。この美しい声の主、メアリー・デュロンにすっかり参ってしまいました。で、アルバムを買ったのですが…いや、素晴らしいですね。彼女の声が聴けるバラッド・チューンは全13曲中5曲のみなのですが、前述の"Collodden's〜"を始め、高名なバラッド"The Lake Of Pntchartrain"(「アイリッシュ・ソウルを求めて」113ページ参照)、淡々とした中にも力強さを感じさせるタイトル曲"Ready For The Storm"(スコットランドのシンガー、ドゥギー・マクレーンのカヴァー)と名唱・名演と言ってもいい曲ばかりです。もちろん、その他のBOTHYの影響丸出しのダンス・チューンもいいです。プロデュースの所為か、それとも彼らの若さの所為か、少し洗練された雰囲気なので、トラッドの泥臭さを求めている人には不向き。ちなみにこのバンド、1stの後にメンバー・チェンジを経て、現在は女5人に男1人という、まるでRon KeelのFAIR GAMES状態であります。(あをやまたけし)


WILD BLUE / EILEEN IVERS
 これもGREEN LINNETのサンプラーを聴いて購入。本国ではかなり有名という、ニューヨーク出身のアイルランド系女性フィドラーの2nd。「美人」ということですが、ジャケ裏を見る限り…う〜ん、どうなんでしょうかねぇ〜。それはさておき、このアルバム、一応トラッドと分類されていますが、そんな枠を完全に超越しています。1曲目の"On Horseback"からぶっ飛んでいます。ダリル・ウェイかと思わせる、弾きまくり。原曲はリールということですが、全くそれを感じさせない。2曲目"Scatter The Mad"でイーリアン・パイプが出てきて、それらしい展開にほっとするも、すぐにハイ・テンションの塊と化す。他の曲もトラッドを下敷きにしているものの、いろんな要素が絡まり合って、聴いてて飽きない。ラテン・パーカッションをフィーチュアした"Ships Are Sailling"、スローなリールで始まって徐々にテンションが上がっていく"Destiyution"等が面白い。この人の幅広い資質がそのまま音として現れています。ブルーを貴重にした、ジャケットのアート・ワークも非常によろしい。ヴァイオリン・フェチの純生さんにもお薦め。(あをやまたけし)