AFTER HOURS / BOTHY BAND
 今をときめくアイリッシュ・ミュージック界の重鎮Donal Lunnyが在籍したBOTHY BANDの'78年録音のライヴ・アルバム。あまりにも印象的なダンス・チューンのメロディ"The Kesh Jig"がオープニング。イーリアン・パイプのスリリングな演奏がたまらない。フィドルにフルートにティン・ホイッスルもある。シンプルな演奏ながらも、ロックに通じる熱いものがある。今も多くのアイリッシュのバンドがやっている基本がここにある。このバンドのアルバム(このライヴ・アルバムに限らず)をどれか1枚聴けば、アイリッシュ・トラッドの魅力がわかるはず。20年後の今聴いても古さを感じないのは、今も昔と同じ事をやっているからなのでしょう。前向きじゃない? 良い物はきちんと後世に伝えていくということでしょう。ダンス・チューンの合間には歌ものが演奏されている。歌っているのは現NIGHTNOISEの女性VoであるTriona Ni Dhomhnaillです。(純生)


CAPERCAILLIE / CAPERCAILLIE
 '82年から活動しているスコットランド出身の女性Voを擁するトラッド・バンドの'94年リリースのベスト・アルバム。アイリッシュなメロディがあるインストのダンス・チューンもあるしで、アイルランドのそれとあまり変わるものはないようです。音作りはモダンな感じがして、とても上品に仕上がっている。CLANNADがモダン化してトラッドが薄らいでいってしまった反面、このバンドには土着のメロディがしっかり残っているので楽しめるし、それがこのバンドの個性です。女性Voも凄く優しく歌われていて、とてもいい。踊れる歌ものがあるのもいいですね。昔のケルフェスで来日したこともあるようです。ライヴではもっと良さそう。きっとALTANと同じぐらい楽しめるんじゃないかなあ。(純生)


AQUBA / JUNE TABOR
 ブリティッシュ・トラッドの女王!とまで言われる人。デビューは'75年にSTEELEYE SPANの女性Vo、Maddy PriorとのSILLY SISTERSでのアルバム。その後にソロ・アルバムをコンスタントにリリースしている。私が初めて聴く本作は'88年リリースのアルバム。驚かされるのは歌以外の楽器の音が、最小限にされていること。アルバム通して彼女のアカペラ状態なのです。たまに、ピアノやホーンなどがバックに入ってくるというわけ。純粋に歌のみを聴かせるのって、よっぽどの力量がなければ出来ないことではないでしょうか。そうなんです。この人の低音の声による歌は力強く、そして時には優しく、それに歌だけだからこその緊張感もある。楽曲にわかりやすいケルトは入っていないけど、歌はアイリッシュを歌う女性Voに通じるものがある。その楽曲のほとんどはトラッドのようです。それと'80年後期とは思えない、時代性を無視したサウンドでもあります。(純生)


JUST IN TIME / MAURA O'CONNELL
 Donal Lunnyの来日公演に帯同した、DE DANNANで女性Voを務め、その後ソロに転身したMaura O'Connellの'86年のソロ・アルバム。彼女はアイリッシュながらもアメリカで活動しているようです。来日公演でも披露された"The Scholar"もそうだし、"Feet Of A Dancer"にしても楽曲がよくて、しかも彼女の力強くも繊細な歌メロが非常に印象的です。サウンドにアイリッシュ色はあまりなくて、カントリーとかジャズの類のようです。彼女の歌の情熱的な部分だけがアイリッシュを感じさせてくれる。コンテンポラリーを歌っていても、Mary BlackやDolores Keaneと同じような…先入観的なものかもしれないけどね。(純生)