CRUSADER / CHRIS DE BURGH
 日本には余り話題に上がらない人なので、取り上げておこう。アイルランドの国民的シンガー・ソング・ライターChris De Burgh、'79年発表の4枚目。もちろんアイルランドといっても、ケルト云々は全く関係ありません。で、このアルバムはALAN PERSONS PROJECT(以下A.P.P.)のアレンジやKate Bushのプロデュースで知られる、Andrew Powellのプロデュースによる初期の傑作です。A.P.P.のアルバムでも随所に聴かれたAndrewのストリングス・アレンジがここでもドラマティックな効果を呼んでいて、シンフォニックですらある。そして叙情的なピアノ、泣きのギターがてんこもり美しいピアノに導かれて、Chrisの震えるようなハイトーン・ヴォイス、ストリングスが盛り上げる1曲目"Carry On"一発でイッてしまいます。あとは、秋の終わりから冬の初めにかけて聴きたい、ちょっと感傷的っつーか、センチメンタルな曲が並ぶ。この時期には恋愛関係でゴタゴタのあった人には、ちょっとツラくて聴いてられないか(自虐的笑)。それと8分に及ぶドラマティックな組曲"Crusader"にも注目。ちなみにバックはIan Bairnson(G)、David Paton(B)の元PILOT、A.P.P.組を始め、Stuart Elliot(Ds)等、Andrew,A.P.P.周辺の人脈がサポート。それにしても、この人のアルバムは大手の外盤店に行けば簡単に手には入るにも拘わらず、ほとんど注目されてないのが悲しい。以前出ていた、他のアルバムの日本盤も廃盤みたいだし。この文章に!ときた人、バックのメンツに「オッ」と思った人は買ってやって下さい。(あをやまたけし)


LIEGE & LIEF / FAIRPORT CONVENTION
 なんかこれ、名盤らしいのだなあ。STEELEYEに比べると、「ケルト」のトラッドに近いぶん美しさが足りないというか、弦楽器の下世話さが引き立ってるというか。Sandy Dennyの声も、なんかなあ。通にとってはこれがいいのでしょうが、素人にはMaddy Priorの方が魅力的です。こんなことばっか書いてると気に入らなかったと思われそうだけど、私はこういうの、好きなんですよ。こっちを先に知ってたら、STEELEYEは上品すぎて食い足りないと思ったに違いない。『RED & GOLD』にはないダイナミックな展開や型にはまらない曲の長さも好感が持てます。4曲くらいメドレーになってるやつと、"Tam Lin"がお気に入り。
で、最後になるけど、私って誕生日がSandyと同じなのです。だから何?って言われると困るけど、ちょっと嬉しかっただけなのよ。これで30で死ねたら本望かも。(きょん)


JOURNEY INTO THE MORN / IONA
 最近はトラッド物でも、かなりコンテンポラリー色が強いバンドが増えてきたけど、このIONAもその中の一つで、このアルバムは4作目。初期は例によってニュー・エイジ風だったらしいが(未聴)、ここではロック色とケルト色のバランスが良く取れている仕上がりになっている。でも、曲によって聴ける強烈な泣きのギター・ソロや、リズム・セクションの乗りから考えてもロック・サイドから見た方がいいみたいだ。あと、キーボード/プログラミングが全体に使われているので、プログレ風でもある。ということはCAMELの例のアルバム(ここでも登場。引き合いに出して説明するには便利なアルバムだ)を気に入った人にもお薦めできるわけだ。ただし、あちらさんのように悲痛な雰囲気はない。メンバー構成はVo,G,B,Ds,Sax/Flute,Whistle/Pipeの6人。ちなみに前ベーシストは元KAJA GOO GOOのNick Beggs(この人、メチャ上手いのは有名)でした。冒頭の紅一点Joanne Hogがゲール語で歌う"Bi-Se I Mo Shuil"から続く、ロック的グルーヴと上昇感のあるメロディの融合が印象的な"Irish Day"の流れは余りにも美しい(ありきたりな表現を使ってしまったな)。このアルバムの山場、11分に及ぶ大作"Encircling"では、泣きのギターが大爆発! たぶんこの人(リーダーでギターのDave Bainbridge)、GENESISとかCAMELとか好きですよ。静/動のメリハリがあり過ぎて、ほとんどトラッド聴いているという感じがしない。凄いインパクト。と、こんな調子なんで、コテコテのケルト・マニアからは嫌な顔をされそう…。最後に、前作に続いてRobeert"クソ親父"Frippも参加。例によって、ど〜でもいいようなギター・プレイをた流してます。(あをやまたけし)


THE TIME BETWEEN / KATE PRICE
 世間ではLoreena McKennittと並ぶ逸材と呼ばれている、彼女の"93年発表のアルバム。ハンマー・ダルシアー奏者で、Kenny Logginsのバック・コーラスの経験があるという、カルフォルニア在住のアメリカ人(当たり前か)。と言ってももちろん「サニー・カルフォルニア」になる訳もない、バリバリのケルト・ルーツのシンガー。…と言い切ったものの、彼女自身、アイリッシュの血が混ざっているのかは不明。アルバムを聴いてみると、ケルト/トラッド色よりもクラシカルな色が目立つし、彼女のシンギングもトラッドというのには少し違う気もするし、案外違うかもしれない(安易な考察だ)。「クラシカルな色」というのは、ハンマー・ダルシアーの音色がハープシコードを思わせること、ピアノ、ヴァイオリン等の奏法がトラッドというよりも、クラシック的なことから感じされる。だから、よりRENAISSANCEなんかに近い印象がある。その極みは"Peaceweaver", "Death Of The Queen"等で味わうことが出来る。"Peaceweaver"を聴くと、知ってる人は誰もがRENAISSANCEの名曲"Ocean Gypsy"を思い出すでしょう。あの心に染み入る「泣き」を充分に堪能出来ますよ。他にも捨て曲なし、全編泣きの嵐。く〜っ。ヴォーカル曲とインスト曲を交互に並べる構成もいいしね。(あをやまたけし)


ISLAND OF HOPE AND TEARS / NIGHTNOISE
 アメリカ在住のケルティック・バンドNIGHTNOISEのベスト物。前からこのバンドのことは気にはなっていたけど、WIDHAM HILLだし、ニューエイジ風という話も聞いていたので、手が出なかった。中古で安かったのと、"Island Of〜"の原曲が入っているので買ったんですが。いーじゃないっすか。確かに初期の作品は、メイン・コンポーザーのヴァイオリン・プレイヤー氏がクラシック畑の人(現在は大御所フィドル・プレイヤーJohn Cunningham先生が加入している)ということもあって、ニューエイジ的ではあるものの、ケルトっぽさは充分に感じられる作風だし。逆に言えば余りアイルランド/ケルト音楽に馴染みのない人は入っていきやすいかもしれない。ただし、メタラーがいきなり聴くと、気持ち良すぎて(退屈で?)眠ってしまうかもしれないので注意。やっぱり聴き物は"Island Of〜"か。あの人の日本語ヴァージョンもいいが、原曲の悲しいことったらない。CAMELの新作にも歌われているテーマと同じ、祖国を追われてアメリカへ移住しなければならなかった者達への惜別の唄。Trionaのヴォーカルも悲しげである。他の曲はほとんどがインストなんで、この曲のヘヴィなテーマが興味深い。こんなにいいなら、ライヴに行けばよかったな。(あをやまたけし)