ANCIENT FORCES / CELTARABIA
 出身国不明のトラッド・バンド、'97年リリースのアルバム。友人が妖しそうなので拾ってきた…というのを借りてきました。バンド名から察することが出来る通り、そのままケルトとアラビア音楽(中近東音楽?)の融合みたいなことをやっている。ノリはすばりアイリッシュのそれだし、そこに中近東風のメロディがちょっと加わっているのかな。中近東といっても、私はイスラエルのゴシック・メタル・バンドORPHANED LANDしか知らないのだけどね(汗)。ダンス・チューンもあるし、女性Vo入りの曲もあるし。楽曲はアイリッシュが根本にあるのだろうけど、もっと乾いているノリで、ノルウェーのトラッドHEDNINGARNAや様々な民族音楽とアイリッシュを融合させたKILAに近い。Saxが入るのが現代的ですけどね。"Lark"はアイリッシュにはない音色の楽器…弦楽器だけど、ハープよりも鋭く繊細な音色を奏でる…そんな楽器がメインのダンス・チューンです。"Eastern Threads Part1-3"はフィドルとパイプが活躍するダンス・チューンで、リズムの速さがアグレッシヴでノリノリです。そして11分にも及ぶ"Eight Step Trance"はよりアグレッシブなダンス・チューンで、体を動かさずにはいられません。延々と続く同じような繰り返し、終わりそうで終わらないのがダンス・チューンの醍醐味。それでいても、リズムのチェンジはあって、だんだんと盛り上がっていきます。エンディング近辺は演奏もより情熱的にそしてスリリングになっていきます。そして盛り上がったラストには女性Voの歌もの"She Moved Through The Fair / Wedding Day"のメドレーでしっとりと締めくくります。"She Moved Thought The Fair"は超有名なトラッドで、Loreena McKennitt, ALL ABOUT EVE, CHIEFTAINS, Richard Thompson, Mike Oldfield, PENTANGLEなどが取り上げているようです。(純生)


TEARS OF STONE / THE CHIEFTAINS
 アイリッシュの長老CHIEFTAINSの'99年リリースの最新作です。女性ミュージシャンのみゲスト参加という素晴らしい企画です! ですが、静かな女性Vo曲が多くて、CHIEFTAINSらしい楽しさ元気さもなく、全体的にはいまいち。ゲストのミュージシャンの色が強すぎるかな。"I Know My Love"というトラッドをやっているCORRSの明るさはいい。陽気なノリと舌っ足らずの可愛いVoがあって、そしてバウロンとティン・ホイッスルとフィドルが奏でるのはいかにもCORRSがやっているダンス・チューンのそれなのです。いったい、どこにCHIEFTAINSのおじさん達はいるのでしょうか; おっとJim Corrお兄さんもギターで参加しています。ブックレットの写真からはハズされているけど; Loreena McKennittの"Ye Rammbling Boys Of Pleasure"はその久々のお声!に、シビレまくります。来日公演でも度々ゲスト参加している矢野顕子の"Sake In The Jar"はトンチがきいているね? 日本の民謡をアイリッシュなアレンジをしたもので、和太鼓ありです。原曲のうち1曲は"ふなまち唄"という曲らしい。そして、このアルバムの目玉は女性フィドラー4人の競演曲"The Fiddling Ladies"でしょう。インストで10分もの大作です。アメリカ人で今度来日するEileen Ivers、Maire Breatnach(知らない人)、そして特にノルウェー人Annbjorg Lienとカナダ人Natalie Macmasterは、地域にも密着した個性的な奏法で、すぐに彼女らの演奏だとわかるのが凄いです。前者2人はそのプレイを聴いたことがないので、わかりませんけど。みんなで演奏しながら、ところどころでソロで演奏するような構成になっています。そして最後は大盛り上がりになって終わるという、ちょっと興奮して涙出ちゃいます。Annbjorgは、元3RD AND THE MORTALのKariの1stソロにも参加してます。独特の細い音色の奏でます。NatalieはAshley MacissacやMary Jane Lammondと同じカナダのケイプ・ブレトン島の出身で、もうノリも奏法も同じですね。踊れちゃいます。しかもこの人は、美形で、演奏しながらステップ・ダンスを踊ってしまうらしいです。そうAshleyと同じです! そしてこの曲でも後半にはステップの音が聞こえてくるのですよ! クレジットにも「fiddle, dance」となっているのです(笑)。いやーいいっす。見たいです。それにしても、おそらくは1人でも絵になる方達が、4人が並んで演奏する光景は素晴らしいのでしょうね。RANKINSは初めて聴きますが、女性コーラスの可愛いところ優しいことがいいです。RIVERDANCEでも歌ったことがあるらしいANUNAも女性コーラスの美しさが特徴なのですが、RANKINSに比べると上品過ぎるところが、あまり面白くないのです。この他にもJoni Mitchell, Sinead O'connor, Joan Osborneなども参加していますが、あまり面白くはない。やっているのはトラッド主体で、"Raglan Road", "Siuil A Run"(CLANNADがやっている), "Danny Boy"(THIN LIZZYの"Black Rose"に導入されている)など知っている曲があるのは、マニアに近づいたようで自己満足的に嬉しいです。(純生)


ON A WING AND A PRAYER / PAMELA MORGAN
 リリース当時に、ポストLoreena McKennitt, Kate Priceとして紹介されていたカナダ出身の女性Voの日本では'97年にリリースされた1stソロ・アルバム。以前はFIGGY DUFFというエレクトリック・トラッド・バンドの女性Voだったそうです。声の方は低音でしっかりと歌うアイリッシュの女性Voと違い、LoreenaやKateのように、ちょっとふわふわした感じの高音。ただしLoreenaのように天空に舞い上がるようなという風ではない。歌のみにくらくらすることは、今のところはありません…こういうことは、歌そのものの良さも影響するが、聴くときの自分の精神状態にもよるものだと思う。楽曲の方はコンテンポラリー・トラッドといったところで、モダン・ジャズっぽい曲なんかは非常につまらないし、静か過ぎる曲もいまいちながらも、ケルティックなメロディの歌もの"Blackwater Side"はやはり好きです。スパニッシュ風の"A Woman's Touch"はノリがよく「ライライラララ…」という歌メロがいい。エンディングでアコーディオン・ソロが炸裂する"It Ain't Funny"も好き。同じくアコーディオンがメインの楽器の"Wish You Could Stay"はいいですね。ダンス・チューンに、ふわふわした感じのVoがのっているという感じ。純然たるアイリッシュにはこういうのは珍しいからというのもある。加えて前述の2人と同様に、作曲もし自らギターやKeyにホイッスルも演奏するというのがいいですね。私は歌うだけの人はどうしても軽く見てしまう傾向があるので。(純生)


IRISH DRINKING SONGS /CLANCY BROTHERS / DUBLINERS
 '95年リリース。アイルランドのパブで歌われるような曲を集めたもの。CLANCY BROTHERSとDUBLINERSという2バンドで、 両者ともアイルランド出身のトラッド・バンドとしては超有名なようです。アイルランド音楽本にも数ページに渡って大きく取り上げられている。で、このアルバムの魅力はケルトの楽しい雰囲気のメロディが溢れているのは当然です。THIN LIZZYがカヴァーした"Whiskey In The Jar"も収録されています。DUBLINERSの演奏による3分の大満足ヴァージョンです。でも、この曲ってCLANCY BROTHERSの持ち歌として有名だったそうな。ちなみにCLANCY BROTHERSはアラン・セーター(アイルランドのアラン島で作られるセーター)をメンバー全員が着ているのがトレード・マークとか; 確かにこのブックレットにもそのお姿を拝見することが出来ます。(純生)


PAST PRESENT / CLANNAD
 アイルランド音楽本に紹介されていたバンドでもあり、再結成THIN LIZZYも出演した「LIVE FOR IRELAND」にも出演していたバンド、ということで興味があり、'95年リリースのベスト・アルバムを購入。 「アイリッシュ・トラッドと現代ロック・サウンドを見事に融合させてきた独自の音世界」という売り文句です。なかなか期待しちゃうものがあるでしょ?
 CLANNADは'69年にアイルランドで結成された、ファミリー・バンド。家族には、あのEnyaもいて、彼女も1年間だけ、Keyとしてバンドに在籍していたとか。 女性Voで、歌い方はLoreena McKennittに通じるものもある。 静かで、女性Voの美しさが表面に出てくる幻想的な曲が魅力的です。 Loreenaほど歌を聴かせるわけでもないけど。現代的音楽の匂いが強くなると、個性も薄まってしまうかのようで、安っぽい曲にしか聞こえなくなってしまう。まあ、このような曲はこのアルバムにはわずかしかありません。ゲスト・ヴォーカルとしてSteve Perryも参加していたり、 U2のボノとのデュエット曲もあり。
 アイリッシュ・トラッドというのは、あまり感じなかった。私の期待するトラッドは陽気な、所謂ケルトのメロディだから。でも、この暗くて陰気なメロディもケルトなそうだ。いいなあと思うけど、頑張って他のアルバムを聴いてみようという気は小さいかな。ちなみにゲール語で歌われている曲に歌詞・訳詞はなし。訳をしているのはあのKuni(笑)。(純生)