BATTLE MAGIC / BAL-SAGOTH
 イギリス出身のバイキング・メタル、'98年リリースの3rd。ジャケットからして、RPG風のファンタジーちっくな戦いの世界。名盤の予感。イントロ"Battle Magic"…本編とは全然違う雰囲気のイントロを配置するってのは昔ながらの手法なわけで、この曲も例外ではない。フル・オーケストラによる楽曲で、アイルランド出身のEnyaのように、ヒーリング・ミュージックのようであり、ふわふわして、ほのぼのとしている。これはこれでクラシックの名曲のようでもある。しかも本編とは全然違うわけでもない。本作のBAL-SAGOTHは前作以上に大仰でシンフォニックなKeyを、そしてオーケストレーションを大胆に導入した、シンフォニック・バイキング・メタル史上、歴史に残るであろう名盤である(そんな歴史があればだが・笑)。私にとっては、今年のベスト・アルバムに違いない。遠慮気味に言っておいても、ベスト3には入るであろう。本編"Daked Steel(The Warrior's Saga)"もイントロからしてどきどきさせられる展開で、力強いギターのリフに、柔らかに絡んでくるKeyの音がなんともいい気分にさせてくれる。ソロ部分には繊細な弦楽器が入ってきたりする。"Blood Slakes The Sand At The Circus Maximus"がこのアルバムを象徴するかのような曲で、メタルよりもクラシックな楽曲の方が多くを占めていて、このアルバム中一番長い8分もの大作である。行進曲か交響曲かというような楽曲に、いちおうロックの楽器が絡む感じのインスト曲。アイディアだけでも素晴らしいのに、楽曲が非の打ち所がないぐらいにいい。どことなくコミカルな雰囲気もある。起承転結も素晴らしく、中間部ではブレークして、男性Voの語りが入る。その後の打楽器と低音の管楽器による力強い演奏。そして勇ましい気分にさせられるバイキング・メタル風のエンディングが待っている。アルバムの最後を飾るのも、フル・オーケストラのアウトロ的な楽曲である。まさに戦いの終焉といった楽曲。アルバム全体も起承転結している。聴き終わった後には、中世の戦い物の映画を見終わった満足感のようなものが残る。勇気と希望と未来と愛と…ともかく前向きな言葉の全てが沸いてくるような(笑)。敢えて難点をあげるとすると、メタル的力強さは前作よりも後退、軽く感じるかもしれない。メタル的な楽曲の良さでも前作の方がかっこよかったかなという気もする。(純生)


SCREAMS OF ANGUISH / BRUTALITY
 アメリカ出身のブルータル・デス・バンド、'93年リリースの2nd。1stはまだ未レポートですが、ブラスト・ビートで激烈なデスということで、かなり気に入ったので、中古ですがこのアルバムの購入となりました。BRUTALITYの秘密その1。この手の音楽は激烈なだけだとアルバム全体で平坦になりがちだが、このアルバムでは曲間にアコギやkey主体の静かに美しい楽曲が挟まっているのがなかなかいい。もっとも、そんな手法はありがちだし、そんな楽曲はサシミのツマに過ぎないけど。BRUTALITYの秘密その2。ブラスト・ビートに、ディープなデス声。これでも充分に満足なのです。私は中途半端なデスがとっても退屈と思う。BRUTALITYはサウンドがいい(のはず!…でも私の音質の良さを判断する器官は、相対的に判断すると腐っているらしいので。でもブラックは音が悪いのが醍醐味だ!とかは言わないけど)。ギターの音色が暗黒系ちっくな美しさです。ギター・ソロになるとDEATHにおけるAndy La Roqueか、OBITUARYにおけるJames Murphyのように華麗なプレイを繰り広げている。忘れていたけど、私が好きなメタルの定義は「激しく美しい」だった。そういえば、このBRUTALITYはまさしくこの定義に該当している。(純生)


CRUELTY AND THE BEAST / CRADLE OF FILTH
 国内盤の発売が待ちきれなくて、外盤を買ってしまいました。待望の新譜。コンセプト・アルバムだった、あの2ndミニの拡大盤といった感じで、前作が古いマテリアルに手を加えたものであったので、その次にくる作品と言ってもいい。より過激に、よりシンフォニックになった、完全に「ブラック・メタル」の枠を超えた、素晴らしいHMアルバムである。全曲、恐ろしいほどのクオリティ。個人的にはチャーチ・オルガン風のシンセが出てくる"Beneath The Howling Stars"が好きだが、人によっては意見はわかれるのではないか。全ての面でレベル・アップしているが、特に耳を引きつけるのが、さらに煽動的になったDaniのヴォーカルの表現力。ただ叫ぶだけでなく、デス・ヴォイスになったり、ささやくように歌ったり、上へ下へと凄まじい。ストーリー上の登場人物の役割を一人で演じているようで、ジャンルは違うがかつてのGENESISのPeter Gabrielのようである(意外と彼らもGENESISあたりに影響は受けているのかもしれない…コンセプト作り、シアトリカルな音楽性、起伏のある曲展開と…共通点は多い。そういえば日本盤ボーナス・トラックでIRON MAIDENの"Hallowed Be Thy Name"をカヴァーしているそうだが、Steve HarrisはGENESISにも多大な影響を受けているのは有名…ブート・コレクターでもあるらしい。MAIDENの特に初期の楽曲を聴くと、あからさまな影響が垣間見える)。サウンド面で前作と聴き比べると、前作がいかにもメタルといった風なリズム・セクションを前面に出して、重量感のある音作りだったが、今回は各楽器のバランスも良く、キーボードの音が全体を包み込むようなミックスになって、更にシンフォニックなイメージを増している。立体的でクリアーな音質になっている。いわゆる「ブラック・メタル」のアルバム史上、最も音質のいいアルバムではないだろうか。楽曲完璧、演奏完璧、音質完璧。他に言うこともなし。以上! (moonwater)


WRECKAGE / ENTOMBED
 3月のENTOMBED初来日に行ってきたのはI.S.E.では僕だけなのでしょうか? その来日記念のミニ・アルバムです。タイトル曲は最新作本編のラストを締めていた、つんのめるようなスピード感が気持ちいい曲。でもその後のライヴ3曲は低音不足で物足りないし、タイトル曲のリミックスはATARI TEENAGE RIOT風をねらったと思われるテクノ調だけど安直。で、大事なのは後半のカヴァー5曲。"Kick Out The Jams"(MC5), "Tear It Loose"(TWISTED SISTER), "Bursting Out"(VENOM)の3曲はオリジナルと言っても違和感のない暴走しまくるメタルなロケンロールになってて、今の路線にぴったり。"Bursting Out"は最後に"At War With Satan"のイントロが出 てくるあたりがVENOMマニア泣かせか? KING CRIMSONの"21世紀の精神異常者"は複雑な間奏の大半をばっさり省いてて、オリジナルのテクニカルさではなく暴力性を強調したヴァージョンになってるのがこのバンドらしい。最後の"Under The Sun"(BLACK SABBATH)はオリジナルに忠実に演奏してるけど、なにせENTOMBEDが演奏してるだけに元々ヘヴィなこの曲が更にヘヴィさを増してておそろしく狂暴。このミニ・アルバムのハイライトと言うべき素晴らしい出来です。てなわけで、前半は悪い意味でファン向けな内容ですが、後半の5曲のためだけでもファンは必聴。カヴァー曲マニアの人にも勧めておきましょう。 (ナンシー関野)


JOY PARADE / FLOWING TEARS & WITHERED FLOWERS
 ドイツの女性Voを擁する5人組ゴシック・メタル・バンドの'98年リリースの2nd。力強くも憂いのあるサウンドである。ポストGATHERING!と高らかに掲げてしまおうではないか。女性Voはソプラノ・ヴォイスではなく、色気があるタイプではないというのが評価を下がるかもしれない。しかし私にはこの安定した低音での歌い回しは、まるでトラッド方面の女性Vo、FAIRPORTのSanday Dennyや覚えたての人なのだがJune Taborなどを思い出してしまって、凄く好感度が高いのです。楽曲の方は、Keyを効果的に使い、ギターも泣きのメロディを惜しみなく出しているが、わりと淡々としているのかも。そんな楽曲を1ランクも2ランクも引き上げているのが女性Voのこの歌唱力であると言っていい。こんなところもGATHERINGに似ている。後半はアコースティックな静かな曲が続きちょっと退屈かも。速く走らない曲調、ゴシック・メタル的なアバンギャルドな雰囲気、そんなところもGATHRINGっぽくていい。しかもフォロワーじゃなくて個性的でもある。(純生)


ANGELS FALL FIRST / NIGHTWISH
 フィンランド出身の女性Voを擁する4人組のゴシック・メタル・バンドの1st。古典的なブリティッシュ・ハード・ロックにKeyでシンフォニックに仕上げた楽曲群…冷静にサウンド分析をするとこうなる。スピーディーなかっこいい楽曲を歌うのは、ロリ・フェイスながらも、凄まじい力量を持ったオペラチックに歌い上げるソプラノのヴォーカリストなのだ。彼女は力強く歌うところでも、力んで声が裏返るようなことがないのが素晴らしい。それに今までにはない新鮮味もある。オープニングの"Elvenpath"がまさに前述の表現を持つ楽曲なのだ。続く"Beauty And The Beast"はシンフォニックなKeyが印象的なイントロが素晴らしい。そしてきらきらと輝くようなメロディはまるでSTRATVARIUSかROYAL HUNT? って、よくわからないけど。ア〜ラビ〜ア音階が印象的な"Tutankhamen"もいい。フルート・ソロが導入されている"Nymphomaniac Fantasia"も名曲。バラード曲も暗黒系特有の透明感ある美しさを持っているのがいい。特にエンディングの"Lappi(Lapland)"は4曲からなる組曲だが(10分弱だけど)、インスト部分の音作りの深さには吸い込まれてしまいそうです。男性Voも入るが普通の声です。暗黒系レーベルSPINFEARMからのリリースだが、普通のメロディアス・ハード・ロックのファンが拒む理由はないはずだ。頼むから聴いてほしい。このアルバムも間違いなく今年のベスト候補だ! (純生)


ILL-NATURED SPIRITUAL INVASION / OLD MAN'S CHILD
 出身国不明(知識不足の為…)のメロディック・ブラック・バンドの4枚目らしい。私は初めて聞いたんですが、いやこれは凄いわ。ブラックというよりはメロデス寄りの音だが、その中でもトップ・クラスと断言できる。ベイエリア・スラッシュ風の硬質なバッキング(3曲目は初期TESTAMENTかと思った)+シンフォニックなキーボード+野太いダミ声ヴォーカル、というのが基本のパターンだが、曲によって色々とバリエーションをつけているので、全く飽きさせない。全8曲中の白眉は"God Of Impiety"。IN FLAMES + IRON MAIDENといった感じのメロディック・スピード・デスでやたらカッコいい。これだけの内容でメンバーたった2人ですからねぇ…。ドラムス以外の全パートを担当しているGalderという男、恐るべき才能を感じさせる。そして、ドラムスのGene Hoglandって、もしかして元DARK ANGEL(おお…)のあの人? だとしたら納得の音楽性&クオリティ。CENTURY MEDIAなので、音質もOK。この内容なら日本盤出てもいいんだけど。ジャケットもいいし。 (moonwater)


THE HAUNTING / SEAR BLISS
 ハンガリー出身だと思っていたが、オランダ出身だったのかも。1stにはあったハンガリーのクレジットがなくなっている。トランペット入りドゥーム・ゴシック・バンドのミニを挟んでの2ndアルバム。1stでは奇をてらってような手法だったのに、ミニで完成度の高い叙情性のあるトランペット入りゴシックを演じていて、形が完成されたような感じであった。それを更にフル・アルバムとして創り上げたのが本作だと期待していたのだが、若干の軌道修正がなされている。トランペットが後退し、きらきらと輝くようなKeyが活躍している。トランペットも出てくるが、ドゥーミィーな楽曲に美しさを加えているのはトランペットではなくKeyなのです。あとは楽曲そのものに現代的な露骨なヘヴィさが顔を出してきているのは、私としては嬉しくない。しかし、ヘヴィなリフと可憐なKeyのメロディのハモリも当然悪くはない。トランペット抜きでも、上級のゴシック・メタルを作り出している。でもでも"Unholy Dance"での寂しさがあるトランペットは実にいい。 (純生)


A FALLEN TEMPLE / SEPTIC FLESH
 ギリシャ出身のゴシック・メタル・バンド、そしてHolyレーベルの至宝であるSEPTIC FLESHの待望の4thがリリースされました。前作では女性Voを正式メンバーに加えて、サウンドに変化を付けてきたわけですが…最近はPARADISE LOSTのようにみんなして丸くなり過ぎる! そんな不満をぶっとばしてくれるオープニング。もう1stからのままのコアなゴリ押し! でもでもメロディは全開。ハモる泣き泣きのツイン・ギターがたまりませんな。しかも、女性Voはなしで満足させてくれるところが憎い。2曲目になるとコア度は薄れるが、めちゃくちゃ官能的な女性Voも入ってくる。この"The Eldest Cosmnaut"はアルバム最後にDark Versionなるものも収録されていて、2度聴かされるのでなおさら印象に残る。『ICON』時のP.LOST風の"Marble Smiling Face"はギターのメロディはもろにP.LOSTなのだが、デスVoと普通男性Voが代わりばんこに入ってきたりする展開は覚えにくい。決して分かりやすい楽曲ではないところが、SEPTICらしくて嬉しいのです。さらに、新しい部分はというと、アルバムの合間にはまっている"Underworld Act 1"、そして"Act 2"です。暗いオーケストレーションばりばりのサウンドにオペラチックな複数の男女混声のVo。ノイジーなギターや、ブラスト・ビートもない。明らかに本来のサウンドとは違うオマケ的なものと思ってしまいがちではあるが、女性Voの2人いるうち一人はSEPTICのメンバーである。そして2曲とも8分もの曲なのに、ELENDのようにだらだらしてない(笑)。コアな部分がなくても、泣きのギターがなくても、変幻自在で迫ってくるような迫力で美しくもあるSEPTICの表現をしている。アルバムのアクセントをつけるだけの楽曲どころではなく、このアルバムのハイライトとも言えるかもしれません。アルバム10曲を3部構成に分けるかのようなサブ・タイトルもついていて、コンセプト・アルバムのようだが、その内容までは深く追求していない。"Temple Of The Lost Race"はHolyレーベル所属以前の別からリリースしたミニ収録のリメイクのようです。確かに昔を思わせるコアな部分が強調された楽曲です。(純生)


SHADOW EMBRACE THE DARK / TWILIGHT OPHERA
 フィンランド出身のシンフォニックなデス・メタル・バンドの1st。声がデス声でありブラックではないことと、ノー・メイクだしデス・メタルと便宜上したが、やっているサウンドはCRADLE OF FILTH, DIMMU BORGIRのようなシンフォニック・ブラックである。透明感あるKeyばりばりで、疾走する曲調はめちゃくちゃかっこいい。DIMMU BORGIRが好きなら、これもイケるはず! 私の場合は女性Vo入りということで期待したのだが、この点では全くのハズレ。あまり色気のない女性Voがちょこっと入る程度でした。このバンド名だし、ジャケットは吸血鬼コスプレのおねいちゃんだし、もっと違うものを期待してました。でも正統派な分(メロブラとしてのね)、安心してお薦めは出来ます。CACOPHONOUSからのリリースです。HOLYの次はここのを集めるかなあ…。(純生)