SYKES'S BIRTHDAY PARTY / 3 MUSKETEES featuring JOHN SYKES
 しばらく前までは、このバンドの音源が今まで世に出ていたのは、私の知る範囲では2曲だけ。JOHN SYKESの『BLOND AND DANGEROUS』というブート(まだ売られているのだが、テープは持っているし、値段がバカ高いので買う気にならない)に3 MUSKETEESのクレジットで'84年のスウェーデンのライヴとして"A Night In The Life Of A Blues Singer"と"Parisienne Walkways"が収録されていた。本アルバムは、ディスク・ユニオンの店員の解説によると、その音源とは別のオーディエンス録音によるものらしい。
 3 MUSKETEERSというバンド名が正しいのかどうかは、ブートのクレジットを頼りにしか分からないことなので、疑っても仕方ないし、そうだとしておく。CBSソニー出版の立派なWHITESNAKE本には「THIN LIZZY解散後に、Phil LynottとJohn Sykesが北欧をツアーした。その直後にWHITESNAKEにSykesが加入する」という一文が書いてあり、年代・公演地・メンバーから、この3 MUSKETEERSと一致できる。メンバーはPhilとSykes、もう1人のG、元LIZZYのBrian Downey(Ds)、そして元MAGNUMのMark Stanley(Key)となっている。年代については、いささか断定しかねる点が多い、『BLOND AND DANGEROUS』の方には'84年とあるのだが、本アルバムでは'83年7月29日となっている。このバンドがそんなに長い間存続したとは考えにくい。しかも'83年の12月頃にはSykesはWHITESNAKEに加入しているはず。WHITESNAKE在籍中にこんなことをするわけがない。だから、'84年というのは間違いであろう。だが、LIZZYが正式に解散したのは…最後にライヴを行なったのは'83年8月23日。…ということは、正式には解散する前に行なわれたライヴであることが立証される。あるいは、こういう考え方もできるだろう、'83年の5月以前に解散ツアーは一度終わっており、5月に来日公演を行い、そこで一度は解散状態となったが、要請を受けて8月23日のレディング・フェスティバルに出演の為にメンバーが集まった、と。まあ、真相は本人達に確認してみなければわからないことだ。
 中身のうんちくに入ります。1、2曲目はPhilのソロ・アルバムに収録されていた"Yellow Pearl"と"Old Town"。続くのは物悲しい静かな"A Night In The Life Of A Blues Singer"。Sykesのギターが泣きまくります。ここで、また面白いことに気が付く。この曲のスタジオ・ヴァージョンは'84年11月にリリースされたPhilのソロ・シングル『NINETEEN』のB面に収録されているのだが、ライヴでは'83年8月のレディングでもLIZZYとして演奏されている。が、ここで演奏されたのはそれ以前というわけ。Philが書いた曲に違いはないけど、世に披露されたのはLIZZY名義ではなくて、この3 MUSKETEERS名義が最初なのかもしれない。"Sarah"はLIZZYの『BLACK ROSE』アルバムに収録されていたバラードで、シングルにもなっている。ただし、LIZZYのライヴに於いては私の知る限り演奏されていない。LIZZYでは演奏しなかったから、LIZZYのライヴとは区別化しなければならない3 MUSKETEERSのライヴで演奏したのだろう。Sykesのクリアな音色ギター、そしてバック・コーラスが凄く印象的です。そしてSykesがオリジナルGary Mooreよりも思いっきり速弾きしまくっている。5曲目は"Unknown"とクレジットされている未発表曲。Philの書いた新曲といったところか。他の音源では聴くことができない。6曲目は"Parisienne Walkways"…Gary Mooreの代名詞として名高い泣きの名曲ではあるが、今宵はGaryの代わって弟子のSykeseeが泣かせます、ってなところだろうか。BLUE MURDERではここまで泣いてくれないだけに凄く嬉しい。ここまで出来るなら、BLUE MURDERでも泣いてくれい!とも思う。続いてPhilのソロ・アルバムからの曲"Solo In Soho"と"King's Call"となる。9曲目がLIZZYの"Cold Sweat"。ここにきて、とうとうLIZZYのライヴでも演奏した曲も解禁。ここまではLIZZYとこのバンドとの区別を明確にしてきたのだが…。そりゃそうだ。Philのソロの曲など物珍しさはあるが、客はずばり言って「LIZZYのPhilの新しいバンド」を観にきているのだ。ライヴ後半に盛り上げる為には、LIZZYのお馴染みの曲を演奏しないわけにはいかないのだろう。続くはLIZZYの"Baby Drives Me Crazy"、毎度お馴染みのオーディエンスとの掛け合い、メンバー紹介もフューチャーされている。Sykesがコールされるところでは、彼の誕生日だということで、「Happy Birthday To You~♪」とPhilが歌っている。そして最後にはSykesがPhilの名をコールしている。そしてセットがとりあえず終了。アンコールを求めるオーディエンスの声は「Lynott」コールから"Baby Drives Me Crazy"のメロディへと移る。アンコールでは"The Boys Are Back In Town", "Dancing In The Moonlight", "Rosalie"をやるとコールしているが、"Rosalie"はやらなかったのかもしれないが収録されていない。また、ライヴ中3度もSykesの誕生日であることをコールするなど、Sykesへの溺愛度が分かる。それだけに、続くPhilのバンドGRAND SLAMにSykesがいなかったのは淋しかっただろうなあ。(純生)


THE THREE MUSKETEERS LIVE IN GOTEBORG / PHIL LYNOTT & JOHN SYKES
 THREE MUSKETEERSの別のライヴ・ブートがリリースされていて、小躍りして買った。曲のクレジットを見ると、上記のやつと同じようだが、ライヴなのだから細かいところはいろいろと違うだろうと期待する。が、ライヴが行なわれた年月日を見て、そして実際に聴いてみて私は泣き崩れた。上記と同じ日のライヴだったのです。
 別タイトルで同じ音源のものをつかむことは、かなり辛い。やり場のない怒りなわけ。気を取り直して、私は2つの音源の聴き比べ作業に入る。同じ日のライヴでも収録方法や収録した機械が別ならば、まだ救われるということだ。なんて、実際のところ、そんなことはないのだが…。収録方法は共にオーディエンス録音。次に特徴的なオーディエンスの歓声を比べる…同じだ。しかし、こちらを繰り返し聴いているうちに違いがわかった。上記のやつは"Parisienne Walkways"で録音装置のピーというノイズが入るのだが、こちらは入らないのです! 全体的に比べても、こちらの方がいささか音質がいいような気がする。強引だけど結論は「別音源」ということになりました。そういうことにさせて下さい。お願いだから…。(純生)


LIVE&DEMOS / PHIL LYNOTT'S GRAND SLAM
 '84年にPhilがLIZZY解散後に結成したGRAND SLAMのライヴとデモ音源のブート。ライヴの前半は以前入手したものと同じセット・リストで特に面白いものはない。7曲目に初登場の"Breakdown"という曲が演奏されている。キーボードのリフが効いたポップな曲です。"Here We Go"も初登場。なかなかハードでノリもよく、オーディエンスも歌っている。でも、どこかで聴いたことあるけど。この曲はHELLOWEEN, GARY MOORE, GUNS'N'ROSESのイギリス公演を収録したライヴ盤でも聴くことが出来る。バンド側が演奏しているのではなく、オーディエンスが歌っているのですけど。正確はことは分からないけど、どうやらイギリスのトラッド・ソングらしき曲なのでしょうか?
 GRAND SLAMのデモ音源自体が初登場なので興味をそそられる。5曲収録されているが、ライヴでも演奏されていた"Breakdown"や"Crime Rate Is Going Up"、後にGaryの『RUN FOR COVER』に収録されることになる"Military Man"。後にHUEY LEWIS AND THE NEWS協力のもとにレコーディングされる"Can't Get Away"は、やはり元々はあんなには明るくなかったのです。サ〜ッというノイズが酷すぎるのが難。(純生)

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