MOORE ATTACK'81 / GREG LAKE
 DISK HEAVENで物色中に、店内にライヴらしき音源が流れていて、曲が"Nuclear Attack"に変わった瞬間に、「これGary Mooreが弾いているのですか」「その通り」「これ頂戴」「お兄さん、お兄さん、他にもGaryのいいブートが出ましたよ」…と執拗な悪魔の誘いにはのらずに、とりあえず買ったのはGreg Lakeのライヴ・ブート。'81年にGaryはGregのバンドの一員となり、"Nuclear Attack"を含む・アルバム『GREG LAKE』もリリースしている。ちなみに再発日本盤は『GREG LAKE & GARY MOORE』というタイトルに替えられている…ううっ悲しいよな。
 で、このブートは音は抜群にいい。というのもKING BISCUT FLOWER HOURというラジオ音楽番組用に収録されたライン録音のものなのです。このブートは放送後のものの録音なのか、数ヶ所にナレーションが付いている。これがうっとおしい気もしますが、私にとっては聴き慣れた、懐かしい声なので、勘弁してくれってほどでもないのです。というのも、このKING BISCUT FLOWER HOURという番組は、私が高校生の頃('83年頃)、FENの毎週日曜日の夜11時に放送されていたのです。1時間まるまる、特定のバンドのライヴを放送する番組で、気に入ったバンドの日はしっかりとエア・チェックしていました。ちなみに記憶があるバンドは、ACCEPT, BLUE OYSTER CULT, DEEP PURPLE(V期), MOTLEY CRUE, TWISTED SISTERかなあ。今もテープ残っているかは不明だけど、TWISTED SISTERは丁度旬だったこともあり、そのテープを聴きまくったものです。
 さて内容の説明。当然、この時のオフィシャル・ライヴは残ってないので、Gregとの共演というだけでGaryファンは嬉しい。"Nuclear Attack"を始めとする『GREG LAKE』収録の曲や、EL&Pの"Lucky Man"、KING CRIMSONの"21st.Century Schizoid Man", "In The Court Of The Crimsonking"もGaryが弾いているのだ。その他の曲についてはGregに対する知識が乏しいのでわからない。しかし、このツアーで演奏しているはずの"Parisienne Walkways"が収録されていない…。クレジットにはなかったのだが、どこかに隠れているはずである!と隅々まで聴いたのだが…私が一番期待していた1曲がカット(?)されているのはちょっと悲しいものがあった。新着ブートのぼったくり価格は3,200円なり。Dsは後にMSGに加入するTed Mckenna。
 そしてレアなブートを手にし、幸せいっぱいだったわずか1ヵ月後に、身の毛もよだ
つ不幸が私に襲いかかった…KING BISCUT FLOWER HOURの音源オフィシャルリリースという…。(純生)


GUITARS / MIKE OLDFIELD
 マルチ・インストゥルメンタリストとして知られながら、「自分が本当に上手くプレイできるのは、ギターだけ」と発言した人にしてこのタイトル、近年のいまいち冴えない作品群(どれとは言わないけど…)がなければ、「AMAROK II」に違いない!と色めきたって待ち構えるところ。しかーし。前作から9ヶ月ぶりという異例のスピードでの新作。しかも直後にツアーを控えてという(そうしないと活動費が捻出できないどこかの新人みたい)。そしてやっぱり出てきたのは、『VOYAGER』に近いが、ところどころ『TUBULAR BELLS III」の"Outcast"的なにぎやかな曲で少しは変化をつけたつもりらしい、インスト10曲で43分の薄っぺらな…何と呼んだらよいのでしょうね、音楽?
 ごめんなさい、曲数と時間の関係は本質ではありません、必然性を持った短さならむしろ望ましい。私は歯がゆいだけなのです。4パートからなる10分弱の"Four Winds"…パートのつなぎというか切り替えは、昔20分の曲をやっていた手法、はたまた『AMAROK』の場面転換さえ思わせ、4つ目のパートのもつ昂揚感はかつての作品には溢れていたもの。どうしてそのままフェイドアウトする? どうしてもっと発展させない? 幾つもの複旋律が絡み合い織り上げていく音のカーペットに全身がくるまれる、どちらを向いても音、音、音、不思議な安らぎ。
 ごめんなさい、テクスチュアが複雑であればとか音が良ければというのも本質ではないんです。たしかによりよいメディアを介したら、手癖の装飾音によるケルト感やわざとっぽいズレ感以上のものは感じられなかった手弾きのニュアンスが、雰囲気を醸し出す大きな要因であったことがわかりました。でも、どんなヘボいシステムで聴いても良いメロディは残るもの。正直言ってこのアルバムは、悪い音で聴いてしまったら救いようがないというのが弱点だと思います。
 タイトル通り全編ギターがメインで、というよりMIDIギターなるものを使用してドラム・サウンドまでギターから出して他の楽器は一切ないとのこと。哲学的には立派ですがそれ以外このアルバムを「Guitars」と名付ける必然性がなかったってのは却って悲しい。かにコースを食べに行ったらご飯もデザートもカニからできていたみたいな感じ。ごめんね、ひどいことをいっぱい書きました。それはこのひとの他の作品(の一部)が美しすぎるせいなのですよ。
 簡単に曲紹介。5曲目の"Out Of Sight"と9曲目の"Out Of Mind"は曲調も構成(アコースティックな始まりと唐突な終わり)も似てて、意識したタイトルでしょう。3曲目"Embers"と10曲目"From The Ashes"は同じメロディで、不死鳥のイメージを何に重ねているのか…シンプルさゆえに1曲目"Muse"が個人的には唯一素直に美しいと思えます。自分の音色を総動員してくれてそれだけで御の字の"Cochise'"、晴れた夏至の日(という意味ではないけど)に風がちょっと吹いて木漏れ日がちらちらしているような"Summit Day"も好き…これを聴く時は、彼の今までの業績は忘れたほうが楽しめるでしょう。 (Kyon Anderson)


FOUR MOMENTS / SEBASTIAN HARDIE
 最近再結成ライヴの模様を収めたライヴ盤が発売された豪出身のプログレ・バンドが、'76年に発表した1st。そのライヴ盤の後を追う形で、本作もボーナストラック収録+リマスターで再発された。
 全体に漂う雰囲気は、哀愁を漂わせたメロウな音、とでも表現することができよう。が、それは決して陰鬱な雰囲気が有るわけではない。ギターとキーボードを中心に据えた、いかにも南半球的な、スケールの大きなサウンドでもって、聴き手に訴えかけてくるわけで、英・欧のプログレとは一線を画する美しさ=個性を持った存在である。
 アルバムの最後を飾る13分もの大作"Openings"では、そのようなこのバンドの特長が、遺憾なく示されているように思う。赤い大きな夕日が南海の波間に沈み、やがてヤシの木の葉陰に星が輝きはじめ、南十字星を中心とした星空が満天に広がり、夜更けを迎える。そして、東の空が白み始め、朝日が昇ってくる…。このように、南国の一夜を13分で表現しきったこの曲は、他のプログレの巨人達の名曲に比肩しうる傑作である。当時の邦題"哀愁の南十字星"(当時のアルバムの邦題でもある)も、なかなかイイセンスなのではないかな。(装甲列車)


MISUNDERSTOOD / STRIDER
 ずっとずっと探していた1枚を、遂に入手することができました。謹んで、ここに報告いたします。
 '74年リリースの2ndアルバム。音はもう、正統派ブリティッシュ・ロック以外の何物でもないのですが、驚くのは、全8曲のいずれもが、アンサンブルや展開がさりげなく細部まで整理されているという点です。この頃のイギリスって、本能のおもむくままに適当に展開してしまうバンドが多くて、そういうのはそこがいいんだけど、何かの拍子にメンバーの呼吸がぴたりとあってしまうと、このような奇跡的な世界ができあがってしまうというわけです。
 今までラジオで聴いたことがあるのは"Open Your Eyes"と"Wing Tips"の2曲だけでしたが、確かにこの2曲はオンエアしたくなるほど際だっています。しかし、この2曲に顕著な緊迫感と終末感は、8曲すべてに共通しています。"Seems So Easy"や"Take It Or Leave It"のように若干ブギー調の曲も実はあったりするのですが、そんな曲でも音の節々から異様なまでの気迫が伝わってきます。そしてもう一つの驚きは、ヴォーカルのロブ・エリオットの歌唱です。'74年という時代にもかかわらず、歌い方がやたらとメタリックでパワフルなのです。この頃にこういう歌い方をしていた人って、あまりいないのではないでしょうか。しかも、この人は本作で参加して、その後消息不明なのですが、一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
 一見普通のハード・ロックでありながら、何か人生を悟ったような隠しきれない悲哀感があり、しかも繰り返して聴くほどますます悲しくなってしまうサウンド。軽々しく盛り上がってはいけないような、気品あふれる音世界。後ろの演奏の、浮ついたところの全くない達観したプレイ。ヴォーカルの存在感。このような特徴から私が連想するのは、そう、THE SENSATIONAL ALEX HARVEY BANDです。アレックス・ハーヴェイの場合はそういった悟りきった哀しみを前面に出していた(あるときは露骨に、あるときはわざと明るく楽しく弾けてしまうという形で)のに対し、STRIDERの場合は普通のハードロックの背後にそれが隠れているという差異はありますが、私はこの両者には強い共通性を感じます。もし、アレックスが素直な性格に育っていたら、こういう作品ができていたのでしょう。(アマリリス緒方)


GTR / GTR
 元YES, ASIAのSteve Howeと元GENESISのSteve Hackettが結成したGTRの'86年リリースの1st。プロデューサーは元BAGGLES, YES, ASIAのGeoffrey Downes。'80年代におけるプログレの人達の再生計画ASIAやYESと同じように、プログレの香りを残しつつも、爽やかなハード・ポップをやられています。当時ラジオで聴いた"When The Heart Rules The Mind"なんて、サビもキャッチーで、でも適当にかっこよくっていいですね。私にとっては、かなり健康的過ぎて退屈と感じる部分もあるのですけど。最初からずーっと爽やかな曲が続くのですが、それはもう初心者にはプログレだったミュージシャンがやっているなんてわからないように…でも9曲目のインスト"Hackett To Bits"で、プログレ魂炸裂。どーせチャート・ファンは最後まで聴いていないとでも思っているのでしょうか? 静かに美しいパートと激しいパートがしっかりとわかれている展開を持つ曲。華麗なギター・プレイも堪能できます。そのままラストの歌曲"Imagning"に続いていくのですが、爽やかに歌おうとも、なんともまープログレな曲です。プログレ初心者ぶりを発揮して、好き勝手なことを書いているけど、ライナーは「サウンド分析」ということで、全曲のコード進行とか書かれていて、それだけでひいてしまうのに、ほとんどに「変則的」とか「複雑」とかコメントついていて、聴く人が聴けばプログレ以外の何物でもないというわけですね。(純生)