WITHIN SIGHT / LIFEFORCE
オランダ出身の女性ヴォーカル含む4人組ハード・ポップバンド。B!でレビューされていたのは今年('01年)に入ってからだが、本国では恐らく'98年にリリースされているアルバムだ。こういうインディのメロディック系バンドは、知らないうちに数枚のアルバムを発表していたりするので、他に作品があるかもしれないが、とりあえず知る限り唯一の作品。青いバックに女性の目のアップ…というジャケットが、いかにもハード・ポップな雰囲気を漂わせていて、それだけでまず興味がそそられる。表ジャケはそういう感じで悪くないのだが、中ジャケに写るメンバーの写真には倒れた…女性ヴォーカル以外の男性メンバー全員がスーツを着込んでいて、これが実に格好悪い。BON
JOVIあたりを意識したのかもしれないが、ちょっとね〜という感じ。サウンド的にも、まさにB級のハード・ポップというところで、演奏力・歌唱力ともにまずまずではありながら、中心となる曲およびメロディが魅力不足(練り不足)という、ありがちなパターンに陥っている。B!のレビューでも指摘されていた通り、女性ヴォーカリストの声質はErikaに似ており、特にハイトーンではそっくりと言っても過言ではない。マニアはそういう楽しみ方が出来るかもしれないけど、だから何…というレベルだろうか。1曲のみ収録されているインストは、どことなくネオ・クラシカルな雰囲気を漂わせているもので、ギタリストはそうした嗜好の持ち主であることも伺われる。ところどころ、耳を引かれる箇所はあるものの、聴き手を引き付けていられないのは、やはり楽曲の練りというか、バンドそのものの力量が足りないということなのだろう。やはりこの手の音楽は曲とメロディが最重要ポイント!という認識を新たにした。元の素養は悪くないと思うし、好きな音楽性ではあるので、次の作品が出たら、それもチェックしてみたいとは思う。 (hatch)
TRUTH / MICHAEL SWEET
ここ最近はじまった話ではないが、'80年代回顧的な風潮に伴って、再評価の動きが著しいSTRYPER。正直なところ、全盛期の彼らを生で体験していないので、あまり偉そうなことは言えないのだが、少なくともリアルタイムでは「クリスチャン・メタル=揶揄の対象」といったような空気も少なからずあったと思う。「えー、ライヴで聖書配っちゃうの〜?
やだ〜!」みたいな。ルックス…というかコスチュームのドギツさも手伝っていたのかもしれない。しかし、時代を経れば経るほど、その存在が伝説的に語られるというのは、それだけクオリティの高い音楽であったということと同義なのだろう。本当に素晴らしい曲を、上手い歌で聴かせてくれる、紛うこと無きGOOD
MUSIC。後追いで彼らのことを知った多くの人が、そう思っているのではなかろうか。前置きが長くなったが、これはSTRYPERのフロントマン、Michael
Sweetの通算4枚目のソロ・アルバムである。オリジナル・リリースは'00年だが、国内盤がリリースされたのは今年('01年)に入ってから。これまで、'94年リリースのファースト・ソロのみを聴いていたのだが、それが今一歩つかみの弱い内容だったため、それ以降の作品はずっと未チェックだった。ソロ・キャリア後はずっとCCM系のレーベルからアルバムを出しているので、日本のレコード会社とのつながりも薄かったのだろう、これがソロ作品としては初の国内リリースということだ。ファースト・ソロは、最近のPETRAあたりに通ずる淡白なアメリカン・ロックという感じで、大味なメロディが彼の魅力を生かしきれていない…という印象があったのだが、本作では数曲でかなり強力な泣きを発散している。ちょっと驚いてしまうような超ヘヴィ曲とかもあるのだが、その合間に現れるバラード・ナンバーや、ミドル・チューンが実に味わい深い。特に(3)(4)(9)(12)は絶品。(4)は少々暗いが、ファルセットを駆使したヴォーカルの泣きっぷりには本当に心を締め付けられる。何というか、様式や形式…といった一線を越えてしまった曲、というような印象がある。
「あ〜、そう来られると弱いわ〜」というレベルまで、ヴォーカルが迫ってくる感じ。バラード・タイプの曲で最も魅力が現れるというのは、本当に歌が上手いということの証拠でもあるのだろう。STRYPERとは全く違う音楽だが、あのSTRYPERのMichael
Sweetが、バンド消滅後10年を経て到達した次元…それがこの『TRUTH』だ。 (hatch)
BREAKIN' CHAINS / SILVER MOUNTAIN
'80Sメタル・マニア間で話題沸騰?かどうか知らないが、とりあえずあのSILVER
MOUNTAINの再結成アルバムである。初期のデモ音源を、ファースト制作時のメンバーで再録した…という事実に、まず興味をそそられる。やはり我々がSILVER
MOUNTAINに期待するのは、モダンなヘヴィ・ロックでも、ジャズ・インプロヴィゼーションでも、メロディック・パワーメタルでもなく、'80年代的な北欧メタルなのだ。懐古趣味と言われようが何だろうが、あの独特の暗さをたたえたチープ・サウンドこそSILVER
MOUNTAIN…そういう頭が固くて精神の古い(?)リスナーにとって、本作は狂喜の1枚に違いない。数年前に、CLOCKWISEが『NOSTALGIA』というアルバムを出した時も似たような感慨を覚えたが、こちらは完璧にオリジナルメンバーがやっているのだから、その感慨もひとしお…というところだろうか。ヨナス・ハンソンのヴォーカルは、ほんと当時のままというか、少しも進歩のない(笑)垢抜けない感じの歌い方なのだが、それが何故か憎めないのだから不思議。プロダクションおよび演奏は、当時よりもアップしているのだけど、元ネタが昔の曲だから、何とも不思議なブレンド感覚を持つサウンドとなっている。懐かしいサウンドなのに、音そのものはチープじゃないというのが、ありそうでなかったサウンド。当時アルバム収録から漏れた曲だからして、ファースト〜セカンド収録曲ほどのクオリティはないが、(1)(4)(6)といったあたりは、'80S北欧メタル・ファンには、きっと好感をもって受け入れられるナンバーに違いない。なんでも話によると、ヨナス・ハンソンが他のメンバーを誘って無理矢理作ったアルバム(特にヤンス・ヨハンソンは
いやいやだったとか)らしいが、逆の見方をすれば「再結成かくあるべし!」みたいな例と言えるかもしれない。らしくないことをやって、ファンの失笑を買うよりも、昔の姿そのものを提示しているのだから、これはまさしく看板に偽り無しである。99%不可能だろうが、来日公演も期待してみたりして。日比谷Again!(笑)
(hatch)
DON'T TALK / YA-YA
Lea Hartの在籍していたポップ・ロック・バンドの'84年の7インチ・シングルです。ライナーによればLea
Hartは'82年に当時在籍していたROLL-UPSとして来日して、半年間も滞在していたらしい。そしてLeaは同郷のアイドル・グループPANACHEをプロデュースした際にPANACHEのグラハム・ギャレット,テリー・スティーブンスと意気投合し、レイ・コールカットというメンバーを加えた4人組がこのYA-YAということらしい。"Don't
talk"は軽快で楽しい曲でFMのポップス番組でよくかかっていました。B面の"Cut
Me Up"は"Don't Talk"とはまったく雰囲気の違う曲で、どちらかといえばこっちの方が少しだけロックしています。2曲とも覚えやすいメロディを持った曲で出来がいいのでアルバムを聴いてみたいのですけど、なかなか見つかりません。ちなみにアルバムのタイトルは『YA-YA』です。見つけたら要チェックです。 (bitter)
地獄の子守唄 / 犬神サーカス団
3rdを愛聴していたのですが、我慢できなくて(?)2ndも買ってしまいました。3rdに負けず劣らずの優れた内容です。歌詞のえぐさについては今さらふれる必要もないでしょうし、また先入観を持たれるといけないのであえてふれませんが、注目してほしいのはむしろサウンドと演奏力、表現力です。ギターなどは1本しかないのに曲ごとに手を変え品を変えて次々にフレーズを繰り出してふところの広さを見せつけていますし、ドラムのタメと張りのある音作りも良いです。そして、相互に空間があってその間を感情が飛び交っているサウンド・プロデュースが、何とも'70年代的なのです。しかしながら、展開やフレーズがかっちりと練られているところは、あくまでも'90年代以降の作り方なのです。つまり、TRIBE
OF GYPSIESやTHE SAVOY TRUFFLEと同じく(音楽性は全然違いますが)、私のツボというわけです。加えて、前にも少し書きましたけど、すべての曲にそれぞれ表現したいものがあって、それが伝わってくるのが素晴らしい。こういう人達は核となるべき自己の独立世界があって、しかももともと応用力の広い音楽をやっていますから、サウンドが変わったとか変わらないとかでごちゃごちゃなることもないのですよ。今後も注目したいです。
(Olias)