ASIA MUSIC FESTIVAL IN TOKYO '94
'94年の話です…。
ISLANDです。ISLANDについて、改めて説明すると、元紫の双子の城間兄弟(VoとB)が'83年に結成したバンドです。'89年にリリースしたシングル"Stay
With Me"がスマッシュ・ヒットし、'93年には1stアルバム『STAY WITH ME』をリリースしています。
今回のこのイベントは11/2から連続して5日間で行なわれ、ISLANDは2日目に登場します。一緒に出演するのは沖縄出身のSinon、それと中国のシンガー・ソング・ライターのアイ・ジンです。
このイベントは出演者に若干の違いはあったようだけど、京都でも行なわれたようです。会場は今話題のビールの名称が地名になり、新たな街となった恵比寿ガーデン・プレイス内の、恵比寿ガーデン・ホールです。街中でビールは飲めるのかなあ、と期待していったのですが、それはありませんでした(笑)。でも、ホールの外のロビーではビールも売っていましたよ。喜んで買いましたよ。「サッポロ黒ラベル」をね・・・って、なんでここまできて「エビス・ビール」じゃないんだ?!
すごく、がっかりしたよ。でも美味しく飲んだ。
さて、ホールは2階席がなくて、中通路までは平坦で、その後はかなりの角度で段差が付いている。この日は座席指定でしたが、平坦な部分の座席は固定になっておらず、ライヴによってはスタンディングで行なわれるようだ。ちなみに私の座席は前から3列目のしかも真正面の好位置でした。主催のなんたら財団関係の招待客も多かったのだろうけど、満席でした。
客電が消えて、SEが流れる。と、何と男女の司会者が出てくるではないか!
意表をつく展開に驚いた。男性の方は日本と白人のハーフのようで、FMでDJをやっているらしい。女性の方は千葉美加という美人で、他の日には司会だけでなく出演もする歌姫です。彼女は日本人で、日本でデビュー後に、台湾に渡り北京語で歌う活動をし、台湾や中国で認められたそうだ。なるほど、私の美的感覚では、彼女の顔は日本人というより、香港あたりの女優のような顔をしている。・・・あっこんなことはどうでもいいか・
で、その司会の内容では、出演順位はSinon、アイ・ジン、ISLANDとなるようだ。うん、やっぱりISLANDがトリをとらなくちゃね!
前もっての告知には、アイ・ジン、ISLAND、Sinonとなっており、アイジンが先でもSinonが先でも、ISLANDが1番最後ではなさそうなので、心配していたのです。
バック・バンドがアルバムのオープニングに収録されていた元気いっぱいの曲"扉(Door)"の演奏を始めると、Sinonが走りながら登場してきた。今まで見た雑誌などでは凄くかわいい表情と、沖縄人の表情が強く感じられた表情があって、どちらが本当なのと戸惑いさえ感じた。私は前者も後者も好きなのだが、いや〜実際に見るお顔は「かわいい!」の一言(ハート・マーク付き)で充分である。黒のレザーのパンツに黒のレザージャケット、姿はハード・ロッカーなのだ。彼女を目的に見に来た人はいるのだろうか。きちっと座って微動だにしない、ノリの悪いオーディエンスの前でやりにくいだろうに、彼女は元気よく歌い、体を動かす。2曲目ではいきなりアコギの"Stay
With Me"だ。この後にMCが入る。歌っている時は透き通った透明な声なのだが、喋る時はハスキーがかった声だ。大阪や沖縄のFM放送局で自分の番組が始まったことなどを話してくれる。何で東京でやってくれないんだっ!
3曲目がニュー・シングルの"Good-Bye"、私はリリースされていたのは気付いていたんだけど、未購入で聴くのはこの日初めてだった。次の曲もアルバムに収録されていない私の知らない曲だった。"Into
The Paradise"はライヴ向きの元気な曲、最後はデビュー曲のしっとりとした"Again"で締めた。大音量、そしてライヴだからであろうか、アルバムでは腑抜けたニュー・ミュージックに感じられた曲が、ヘヴィになっている。躍動感溢れる彼女が目の前にいるからであろうか、凄くいい曲になっている。前回では彼女の歌唱力が得に素晴らしいわけではない、というようなことを書いたが、この日の彼女のヴォーカルを聴いたからには、訂正しなければならない。まったくもって、彼女のヴォーカルは素晴らしかった。ただし、ライヴを考えてのことかノリのいい曲中心に選曲され、私の好きなしっとりとした"海の匂いがする"や"抱いてあげる"が歌われなかったのは残念だった。
Sinonが終わった後に、「次の演奏までに15分の休憩に入ります」とかいうアナウンスが入るものと思っていた。しかし先程の司会者が出てきた、後では楽器を取り替えたりして次の準備をしている。休憩とかはなく、準備をしている間は司会者が場をつなごうというのだ。これは予定が狂った。だって、私は休憩時間の間にまたビールを飲もうと思っていたから。しかし、この時間は単なる場つなぎで終わらなかった。司会者が再びSinonを呼び寄せ、トーク・ショーのように話を始めてくれたのだ。その中で特に気を止めた話があった。子供の頃にみた再結成・紫のライヴを見て、高校入学と同時にバンドを結成したのだそうだ。そして、今はその紫のメンバーと何度か会う機会があったという。え〜話やの〜(涙)。
アイ・ジンはTVの「アジアン・ビート」で少し見たことがある程度で、全然予習をしていなかった。ちなみに同番組はヴィヴィアン・チョウを見るのが目的である。で、アイ・ジンの曲は暗いフォークというイメージを持っていた。普段はアン・プラグドで演奏しているのだろうね、この日は特別ということで、日本のプライベーツというバンドがバックを担当する。このバンドのことはよく知らないけど、ギターの一人は全身レザーに長髪、サングラスと、HMではないにしろ、ロックなのでしょう。出す音もそのようだった。で、そのバックが演奏を開始した中、アイ・ジンが歩きながら、しかも下にうつむきながら登場する。この登場の仕方はかなりインパクトあった。私がイメージしていた「暗い」というのが、そのままなのだ。黒の長袖にシャツに、黒のロング・スカート、黒の重そうなブーツ、唯一ベストは派手な花柄であったが、キャラクターが出来ているというのだろうか。マイク・スタンドに近寄って、静かに歌う姿も雰囲気出ていた。間奏の部分にあると、少し下がりオーディエンスに背を向けるのだ。完璧だ!
また、オーディエンスの反応・声援もSinonとは比べものにならないぐらい凄い。日本でのデビューはつい先日なのだが、それ以前からの根強いファンが多いのであろう。そして、この日を彼女を目的として来た人が多いのであろう。2曲目以降は、彼女がフォーク・ギターを持ちながらの演奏となる。たどたどしい日本語によるMCがかわいい。「ありがとございます」「こんばんわ。こんにちわ。おはよございます」・・・・
北京語や英語によるMCもあった。曲は一部は英語も混じっていたが、北京語による曲で、曲に乗っかってくる感じは英語よりは日本語に近いのだけども、日本語ではない、という不思議な雰囲気だった。後半はおそらくは代表曲が続けて演奏されたのであろうか、彼女が曲名をコールするだけでオーディエンスがわくのだ。彼女も6曲程度でステージを終えた。
司会者が出てきて、アイ・ジンを呼び寄せトークを繰り広げている間に、いよいよであるISLANDのステージの準備がされている。少女っぽいルックスのアイ・ジンや千葉美加に見惚れながら、後の準備風景に目をやると、ドラム・セットを挟んで、Keyのセットが2つある。しかも片方はピアノとオルガンのようでもある。こ、これは、もしかしたら・・・ジョージ紫がゲストとして参加するのではないか!?
そう、ジョージはISLANDのメンバーではない。でも、1stアルバムでは曲作りや演奏でゲスト参加しているのだ。もしも、があってもおかしくはないのだ。そんな間に準備が終わったようで、司会者がISLANDを紹介する。「今夜はゲストとして、紫時代の仲間であるジョージ紫さんと比嘉さんもきてくれました」と。予想しなかった出来事に、し〜んとしているオーディエンスの中、私は悲鳴と共に拍手をしてしまったよ。
ISLANDの登場である。1曲目はアルバム中唯一の英語の歌詞だった"Island
Breeze"です。ステージ中央には意外と小柄な城間正男が、右にはそっくりの城間俊雄が、左にはアフロ・ヘアーに立派な髭を蓄えた紫時代とさほど変わらぬ大きな比嘉が、そして右の奥にはジョージがいる。アルバムでは聞こえてこないジョージのオルガンがかぶさっている。オーディエンスの拍手に「Thank
You」と答えただけで、2曲目の"Open Your Heart"が続く。アルバムでは女性Voとデュエットしていたヘヴィ・バラードだが、この日は正男さんが一人で歌う。この曲の後に、ようやく日本語によるMCが入る。東京でのライヴは本当に数年ぶりのようなのだ。こういっちゃなんだけど、正男さんのMCはこちらがどきどきと心配してしまうぐらいに、たとだとしいのだ。もう20年は人前で歌っているはずなのに、まだデビューしたての新人のような初々しさである。だのに、曲が始まり歌い初めてしまえば、さっきまでのたとだとさしは吹き飛んでしまい、この日の女性2人よりもはるかに上等な歌を披露してくれるのだ。更にこんなことを言っては失礼なのだが、正男さんは私の想像する以上に年をとっていて、老けてみえた。痩せていて、顔の肉付きが少ないから余計にそう見えると思うのです。しかし、この「老けたおじさん」から発される声は・・・非常に若々しいのだから不思議でしょうがない。青年のような甘い声である・・・。
3曲目はジョージが作曲した"My Love"です。私が"Stay With
Me"の次に大好きな曲です。この曲がジョージ紫プロジェクトの日本語詩のリメイクであることを知るのは、ずっと後のことです。イントロのピアノ部分ではジョージにスポットライトが当たる。照明係さんも分かっているのではないか!
間奏のオルガン・ソロでは再びジョージにスポット・ライトが当たる。奏でられるオルガンの音色なやさしいのに、なんて激情的なアクションをしながら弾くのだろうか。かっこよかった。
4曲目はアルバム未収録で先頃リリースされたばかりのシングル曲"After
The Rain"。なんてことないコトだけど、この曲中に正男さんが「Ha!」と発したものが、紫のライヴ・アルバムから聞こえてきたものと同じで、「お〜!」と思ってしまった。5曲目にこの日2度目の"Stay
With Me"です。この曲は当然演奏するわけだし、特に新たな感動はなかった。それよりも終盤にきて、この曲ということは、もう終わりではないかと心配していた。せっかく紫のメンバーの6人のうち4人もいるのだから・・・"Double
Dealing Woman"あたりをやって欲しい!! 曲が終わっても誰も楽器を置かない。まだ続く!
正男さんのMCが入る「同じ曲"Stay With Me"を歌ったSinonを、呼んで一緒に歌いたいと思います」
・・・いくらなんでもSinonと一緒に紫の曲はないよな; 私の欲望は満たされないと判断し、残念だが諦めた。しかし、同じ沖縄出身のSinonとのジョイントだなんて、こりゃ〜なんて粋な計らいではないか!
これはこれでとても嬉しいぞ。オーディエンスの拍手の中Sinonが登場し、正男さんと握手する。曲はこれからリリースされる正男さんのソロ・シングル(!!)の"花"という曲です。この曲は現在も喜納昌吉&チャンプラーズとかいうバンドで活動中の、喜納昌吉の昔に沖縄でヒットした曲ではなかろうか。正確なところは知りません。何となく聴き覚えはありそで、なさそう。で、この曲をSinonとデュエット後に、ISLANDのステーの終わりを告げるかのように、司会者が登場する・・・。
ISLANDのメンバーを残したまま、トークが始まる。ISLANDの音楽には意識して、アメリカの音楽と沖縄の音楽を取り入れたのですか?
との司会者の問いに、俊雄は「意識してない。自分たちの自然のままの音楽です」の答えたのは面白かった。ISLANDには沖縄の島唄は無関係だものな、この質問はナンセンスだった。今後の活動は来年の春にシングルをリリースして、夏にはアルバムをリリースするらしい。1stアルバムのセールスがどのぐらいだったかは分からないが、決して大ヒットはしてない。それを考えると2ndアルバムというのは予期できてなかった。嬉しい。また、司会者が「私の子供の頃はDEEP
PURPLE、紫、そしてCONDITION GREENでした。ぜひジョージ紫さんにも一言お願いしたいと思います」と会心のセリフです。紫はさておき、CONDITION
GREENまで出てくるとは思わなかった。私が認知している以上にCONDITION GREENも人気があったのか、あるいはこの司会者が本当にマニアであったのか、どちらにしても嬉しいよ。で、ジョージが「日本語はうまくしゃべれないのですが(ジョークなのか、本当なのか分からない・)、ISLANDをこれからも応援して下さい」というようなことを言った。そして、本フェスティバルが終了した。3つのアーチストが均等の時間を演奏したライヴだった。7時に開演したのに、いつのまにか9時半を回っていた。
ISLANDの選曲はとても良かった。ISLANDには2種類の曲がある。外部のライターが書いたロック色が強い曲と、KeyとVoを担当している新川正啓が書いたニュー・ミュージック色の強い曲とが。この日はジョージさんと比嘉さんがいたからであろうか、後者の曲もあったが、前者の曲を重点に選曲されていた。私にとっては好きな曲が漏れなく演奏されたわけで、充分に満足できました。ただし、紫の曲が演奏されなかったことを除きです。ああ、せっかくジョージと比嘉さんもが、わざわざ東京にまで来てくれたというのに、もったいないよな〜。もし今度はフルセットのISLANDのステージが見れたとしても、ジョージが参加する保証はないし、そしたら紫の曲なんか演奏しそうにもないもんなあ。
チビさんも含めば、紫のメンバーの6人のうち5人までもの動く姿を見れたわけです。沖縄ロックを好きになった当初は、昔のものとしか思っていなかったから、こんなことになるとは思ってもみなかった。ここまでたどりついたんだなぁ。 (純生)